ノマド・スタディ考。 〜「いつでも・どこでも」学ぶことの陥穽とその対策⑥〜

続いて、『私の早慶大合格作戦』を見ていく。

●早慶

『私の早慶大合格作戦 2012年版』

「それで行きの電車の中では英単語の勉強をしていました」「帰りは古文単語の『頻出古文重要語』(桐原書店)を使って単語を覚えていました。電車の中の時間を有効活用していましたね」(12 太田もえ)

「また、私は文化史が苦手だったので、自分でレコーダーに吹き込んで寝る前に聞いていました」(25 今村達也)

「(単語帳を」毎日のちょっとした時間を利用して覚える。
単語だけを30分や一時間かけて勉強することは退屈でなかなか集中できません。ですので、バス、電車などを待つ時間、寝る前の時間、起きた直後の時間などのちょっとした時間を使い、集中して単語を覚えることが効果的であると思います」(77 匿名希望)

「(漢文の参考書)ズボンのポケットに入るほどの大きさで持ち運びが非常に便利で、ちょっとした時間に勉強できます」(81 匿名希望)

「(注 参考書は)普通に学校で配布されるものを使っていました。1冊これ、と決めてとことんするのが好きで、お風呂や移動中など、どこへでも持ち歩いて時間を見つけて開いていました」(85 二木緑葉)

「参考書付属のCDはiPodに入れて学校への移動時間などの隙間時間を見つけて何度も聞きましょう」(96 岸利宣)

サブノートを作っていくという「この作業をたとえば一つの長文につき三個くらいのペースですすめていくと、一冊の自分のオリジナル正誤問題集が完成します。あとは、完成したら、電車の中や、ちょっとした隙間時間を利用して解いていってください」(108 早川智美)

「暗記が苦手でなかなか覚えられない、という方少なくないと思います。私自身そうでした。そこで私はICレコーダーを使いました。具体的には時代別に年号のゴロや重要用語をICレコーダーに吹き込み、通学の間に聞いていました。満員電車で身動きが取れなくても、耳で聞くことは可能ですし、五感を十分に使うことで記憶が鮮明に残るという点で効果的だったと思います」(109 早川智美)

「たとえば通学時間。電車が混雑するから勉強できない。だからしかたない。これはいけません。混雑して、単語カードもめくれないというなら、ICレコーダーを利用して、耳で覚える勉強ができます。自転車通学の人だって、赤信号を待っている間に単語一つ覚えられるはずです。他にも、携帯をいじっている時間や、テレビを見ている時間、ただダラダラ過ごしている時間など全て考慮すると、意外と、利用できる時間はたくさんあります。こういった、いわゆる隙間時間を大いに利用して、周りとの差を広げていってください」(『私の早慶大合格作戦 2012年版』:116 早川智美)

「7〜8時に起きて、朝ご飯を食べながら単語とか熟語みたいな、書く作業をしない勉強をやっていました。昼ご飯もひとりでそんな感じですごし、晩ご飯は家族と食べて、しばしの団欒、それから、勉強。寝るのは3時以降でした」(118-119 八木健太)

「例えば平日は朝4時半にマクドナルドで朝マックを食べながら勉強して、そのあと学校についたら学校の自習室で勉強して、学校の授業を受けていたんですけど、家では勉強しなかったですね。そのかわりに夜10時に寝て朝3時に起きて、自分の時間は保ちつつ勉強の時間もちゃんととっていましたね」(129 関友樹)

『私の早慶大合格作戦part1 2011年版』

「着替えるとき、ご飯や移動時間は、iPodに入れた『ターゲット1900』や『DUO』、それとICレコーダーに吹き込んだ日本史と古文単語を聴いていました。寝るときも、これを流したまま寝ます。お風呂はもちろん参考書持ち込み、トイレはプリントを壁に貼って、起きている時間はずっと勉強態勢です」(『私の早慶大合格作戦 2011年版 part1』85-86 二村萌)

参考書の紹介として「DUO セレクト CD(アイシーピー)1つの英文に重要事項がたくさん盛り込まれていて、かつおもしろい。移動中や寝る前に聴いていた」(91−92 二村萌)

「単語カードはただ『ターゲット』を写しただけでしたが、載っている意味は全部書きました。これを直前期は朝起きて、お昼の後、寝る前と一回ずつ回しました。
ノートは、過去問ノート(2回目以降、前回間違えた個所を確認できる)と自由ノート(無地の大きい自由帳に)暗記事項、まとめ、落書き、メモなどが書かれている)を主に使っていました。」(97 二村萌)

「ノート・カードを作ることで時間や体力を消耗したり、満足してしまったりするのが嫌だったので、ほとんど作っていません。参考書を何度もまわして、正誤のチェックマークをつけるくらいでした」(138 田中綾乃)

「時間とスピードを意識した勉強は、おのずと集中力につながるように思います。あと、個人的には、電車の中で勉強するのが今でも一番集中できる上に、通学などでは乗る時間が決まっているので、時間セットを体に覚えさせるのにもよいと思っています」(141 田中綾乃)

「私がこの膨大な単語量をこなすのに愛用したのは、『単語王2002』(オー・メソッド出版)という単語帳です。まずは毎日1unitのペースで1周します。このとき注意したいのが、1周し終わったころには最初のほうの単語を忘れてしまっていることです。空いた時間に以前やったページをこまめに見直すのもいいですし、覚えにくかった単語を単語カードに書きだしてそれを見直すのもいいでしょう(個人的には後者のほうがよかったのですが…)_(149 加藤勇人)

「単語帳やカードをいつやるか。これもなかなか難しい課題です。私はやり慣れた単語帳や単語カードは地下鉄やバスでやって、初めて手をつけるものは机でじっくりと時間をかけて取り組むようにしました。やはり初めて見る単語は慎重に覚えるべきです。単語を覚えられるか否かは、最初見たときに覚えたか否かに直結していると思います。最初に|単語を見たときに覚えないと、その単語に「難しい」というレッテルを貼ってしまい、その単語に対して苦手意識を持ってしまうからです。だから、初めて見る単語は慎重に時間をかけて覚えましょう」(149-150 加藤勇人)

「文法は先ほども説明したように、中澤先生の『Flash! Grammar Tips1・2』を使っていました」「その際、「My Tips」といって、小さめの手のひらサイズのノートに自分の苦手分野を項目別にまとめてピックアップすると、空いている時間にチェックすることができる|ので、効率良く覚えることができます。苦手分野は一日のうちいかに多く目を通すかで、すぐ克服できると思うので、触れる機会だけでも自分で作ってみてください」(177−178 鈴木美紀)

「直前期はその文化史のテキストをコピーして、サランラップに包んでお風呂の壁や洗面所の壁に貼り、髪の毛を洗いながら、髪の毛を乾かしながら、ひたすら食い入るように見ていました(笑)
細切れの勉強時間はあなどれません。いかに工夫して生活に取り入れるかも重要ですよ。どこでも勉強する時間を作り出してみてください。意外にも無駄にしている時間は多いものです。そこで差を少しでもつけましょう」(180 鈴木美紀)

『私の早慶大合格作戦 2011年版part2』

単語帳を「何度も繰り返しながら、よく忘れてしまう単語をノートなどに書いて、電車などの移動中にチェックなどすると、効率よく覚えられる。CDやフラッシュカードを使って、音読したながら暗記すると覚えやすくなる」(36-37 匿名希望)

「私は全教科、間違えた問題や正解していても解説を見て足り|なかったものをノートに写し、電車の移動中やバイトの休憩時間などこまめに見ていました。そもそも間違えた問題を次に出来るようにすること以外に、学力を上げる方法などないと思います」(154-155 猪又雅司)

日本史のゴロ「付属のCDを細切れ時間に聴くことで、さらに効果的に暗記することができました」(186 早瀬雄一)

『私の早慶大合格作戦 2010年版part1』

「また、私はク|ラスのDSブームにのっとって、山川出版社の日本史ソフトを買って、持ち歩いてヒマなときにやりました。常に接しているという心がけが大切だと思います」(75-76 大岩千紗)

『私の早慶大合格作戦 2009年版』

予備校ある教師の「授業はスピーディーで、ムダなものが省かれている。この何十枚もあるプリントを、私は2年間かけてじっくり覚えていった。あるときは縮小コピーしてポケットサイズにして、ちょっとした時間に見直した」(101 野村明義)

世界史の参考書について「何度もこの中のゴロには助けられました。もう一つオススメなのが、授業を録音したものを、食事中、歯みがき中などに聴くことです。|私は夏や冬に代ゼミのフレックスサテライン(諸岡先生)を取って、カセットに録音して常に聴いていました。英語と同じで、やはり暗記は何度も触れることがいちばんです」(187-188 石川昇)

『私の早慶大合格作戦 2008年版 part1』

英単語「覚え方としては、別売りになっているフラッシュカードで一日1~3ユニットを一回5・6個ずつ休み時間などに少しずつ覚えていき、次の日の朝にもう一度通して見ると効果的です」(26 猪口翔)

『私の早慶大合格作戦 2007年版 part1』

「②(注 英熟語の参考書)は暗記の助っ人というのがあって、覚えづらい熟語もわりとスラスラ入りました。CDも買い、電車の中で聞いていました」(49 石渡健輔)

「ちなみに憲法は夏休みに毎日お風呂で暗唱して覚えました。政経はこの方法で模試では最高偏差値77までいきました」(85 市原弘規)

「私はiポッドにリスニングのCDをすべてまとめ、移動時間中に聞いていました。単語帳の音読CDなどもiポッドに入れておくと持ち運びが便利ですし、無駄な時間を節約できます」(126 石井誠)

「私はこの問題集を、いつもフラッシュカードと一緒にポケットに入れていました。空いた時間、休み時間や待ち時間にも勉強できるようにです」(176 村山天生)
古文単語帳「これはCD付属のもあり、私はMDに入れ、自転車での通学、通塾時にずっと聴いていました」(180 村山天生)

ここまで『私の東大合格作戦』と『私の早慶大合格作戦』を見てきた。
さて、ここから見えてくるのは受験生の「ノマド・スタディ」の手法の特徴である。

1,ノマド・スタディは「情報カード」「サブノート」「ミニノート」に暗記事項を書くことによって為される行為である。

2,東大合格者よりは早慶合格者のほうが「ノマド・スタディ」記述が多い。

3,2はブルデューの言うところの「ディスタンクシオン」の違いである。つまり、一見泥臭さのある「ノマド・スタディ」(=いつでも・どこでも学習)記述は「スマートさ」のある文化貴族である東大合格者の合格体験記では「敬遠」され、逆に早慶合格者には自己の努力資本を示すものとして賞賛される結果となる。

この1〜3から読み取れるのは、「ノマド・スタディ」の格差性である。東大合格者のほうが「スマート」な「ノマド・スタディ」記述となっている。

参考文献

浅田彰, 1983, 『構造と力――記号論を超えて』勁草書房.
『千のプラトー』
中谷健一, 2010, 『「どこでもオフィス」仕事術――効率・集中・アイデアを生む「ノマドワーキング」実践法』ダイヤモンド社.
和田(1994):受験勉強マニュアル
斉藤日出治, 1999, 『ノマドの時代[増補版]――国境なき民主主義』大村書店.
高島徹治(2007):『もっと効率的に勉強する技術!』 すばる舎 (2007/7/20)
佐々木俊尚, 2009, 『仕事をするのにオフィスはいらない――ノマドワーキングのすすめ』光文社.
竹内洋(1991):『立志・苦学・出世』講談社。

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